執筆:長崎 一哉(JACRA初代代表/藤田医科大学)
内科病棟における指導医回診の時間と研修医の試験成績との関連を検討した私たちの研究が、2026年11月5日に Scientific Reports(Nature Portfolio)に掲載されました!
この記事のポイント
・全国の初期研修医6,347名を対象とした横断研究
・回診時間が長いほど試験成績が高い、という関連は見られなかった
・大切なのは回診の「量」より「質」――時間をどう構成し、学びにつなげるか
研究の背景:回診は「長ければ長いほど良い」のか?
指導医回診は、内科病棟における中心的な教育活動です。患者さんのベッドサイドで指導医と研修医が一緒に考える時間は、多くの医師にとって忘れがたい学びの場でもあります。
一方で、回診の実施には多くの時間がかかります。働き方改革も進み、病棟教育に使える時間が限られる中で、回診の教育的価値をあらためて評価する必要があると考え、本研究を行いました。
研究の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 全国横断研究 |
| 対象 | 2023年度の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を受験し、受験後アンケートに回答した初期研修医(PGY1–2) |
| 規模 | 6,347名 |
| 評価した項目 | 1週間あたりの内科指導医回診の時間(なし/1–2時間/3–5時間/6–10時間/11時間以上) |
| アウトカム | GM-ITEの内科領域得点および総得点 |
| 解析 | 混合効果線形回帰モデル(週1–2時間を基準に比較) |
主な結果
✅ 最も多かったのは「週1–2時間」
回答者の44.1%が、1週間あたりの指導医回診を1–2時間と回答しました。
✅ 回診が長いほど成績が高い、という関連は見られなかった
むしろ、週1–2時間と比べて、週6–10時間(調整平均差 −0.47点)や週11時間以上(同 −0.70点)の研修医では、内科領域の得点がわずかに低いという関連が見られました。総合内科ローテーション中のベッドサイド回診の時間についても、長いほど得点が低い傾向がありました。
⚠️ ただし、差は小さく、因果関係は示していない
得点差は小さく、また横断研究であるため、「長い回診が成績を下げる」という因果関係を示すものではありません。
この研究が教育現場に伝えること
本研究は、回診の教育的価値を否定するものではありません。重要なのは、回診の「量」だけでなく、その時間をどのように構成し、学習につなげるか――つまり回診の「質」だと考えています。
チーフレジデントや指導医の立場からは、たとえば次のような視点が考えられます。
- 回診の目的と学習目標を事前に共有する
- 情報確認だけで終わらせず、臨床推論を言語化する場をつくる
- 回診後に短いフィードバックや振り返りを入れる
- 長時間化している場合は、時間配分や参加メンバーを見直す
どのような回診が教育効果の高い回診なのか、今後さらに研究を進めてまいります。
なお、研修医の学びに関する関連研究として、研修医のGrit(やり抜く力)とGM-ITE得点の関連を検討した研究(JGIM掲載)もぜひあわせてご覧ください。
研究助成・謝辞
本研究は、科学研究費助成事業(科研費:JP24K20162)の支援を受けて実施しました。研究にご協力くださった研修医・医療機関の皆さま、そして共著者の先生方に心より感謝申し上げます。
チーフレジデントの皆さんへ
チーフレジデントは、指導医と研修医の両方の声が届く立場にあります。回診の時間を延ばすことよりも、「今日の回診で何を学んだか」を研修医に聞き、その声を指導医と共有して回診の形を一緒に整えていく――そんな橋渡し役こそが、回診の「質」を高める第一歩になると考えています。
論文情報
Nagasaki K, Nishizaki Y, Shimizu T, et al. Association between time spent on internal medicine attending rounds and in training examination scores among resident physicians in Japan. Sci Rep. 2026. doi: 10.1038/s41598-026-79280-w(オープンアクセス)