【論文報告】研修医の「やり抜く力(Grit)」は医学知識と関連するか?全国2,939人の研究がJGIMに掲載されました

執筆:西澤 俊紀(JACRA前代表/東京科学大学・聖路加国際病院)

総合内科領域のトップジャーナルの一つである Journal of General Internal Medicine(JGIM) に、私たちの研究が掲載されました!

今回のテーマは、研修医の「Grit(グリット)」―長期的な目標に向けた情熱と粘り強さ―と、医学知識・自己学習時間との関連です。

研究の背景:知識だけでは測れない「伸びる力」

研修医の成長を考えるとき、私たちはつい試験の点数や経験症例数に目を向けがちです。しかし、日々の忙しい臨床の中で学び続けられるかどうかには、知識以外の要素――いわゆる非認知能力――も関わっているのではないか。そんな問いから本研究は始まりました。

Gritは心理学者Angela Duckworthらが提唱した概念で、次の2つの要素から成ります。

  • 努力の粘り強さ(Perseverance of effort):困難があってもやり抜こうとする力
  • 興味の一貫性(Consistency of interest):同じ目標に関心を持ち続ける力

研究の概要

項目内容
デザイン全国多施設横断研究
対象基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を受験した初期研修医(PGY1–2)
規模全国553病院・2,939人
調査時期2025年1〜3月
Gritの評価日本語版Short Grit Scale(Grit-S)
主要アウトカムGM-ITE得点
副次アウトカム1日あたりの自己学習時間

主な結果

✅ Gritが高いほどGM-ITEの得点が高い

Grit-Sが1点高いごとに、GM-ITE得点は約1.0点高いという関連が見られました。自己学習時間を考慮しても、この関連は残りました。

✅ Gritが高いほど自己学習時間が長い

Gritが高い研修医は、より長い自己学習時間を報告する傾向にありました(調整オッズ比 約2.0)。

✅ 鍵は「努力の粘り強さ」

Gritの2要素のうち、試験得点と関連していたのは「努力の粘り強さ」で、「興味の一貫性」には明らかな関連は見られませんでした。

この研究が教育現場に伝えること

横断研究のため、因果関係は断定できません。それでも、研修医の学びを支えるうえで、知識や学習時間に加えて、粘り強く取り組む姿勢にも目を向けるきっかけになればと思います。

チーフレジデントや指導医の立場からは、たとえば次のような視点が考えられます。

  • 結果だけでなく、取り組みのプロセスを承認するフィードバック
  • 自己学習の時間を確保できる勤務・教育環境づくり
  • つまずいた研修医がやり直せる心理的安全性のあるチーム文化

謝辞

研究にご協力くださった研修医・医療機関の皆さま、そして共著者の先生方に心より感謝申し上げます。医学教育や研修医の成長に関心のある方に、ぜひお読みいただけるとうれしいです!

論文情報

Nishizawa T, Nagasaki K, Nishizaki Y, et al. Association Between Grit and In-Training Examination Scores Among Japanese Medical Residents: A Nationwide Study. J Gen Intern Med. 2026. doi: 10.1007/s11606-026-10970-x