2019年2月基調講演「チーフレジデント宣言」のpart3完結編「チーフレジデントの進化」を徹底解説!

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前回(part2)ではチーフレジデントの潜在能力についてまとめましたが、これらすべてを一人のチーフレジデントで成し遂げているわけではありません。 歴代のチーフから引き継がれてきたプロジェクトもあれば、相方のチーフレジデントと分担してすることもあります。 そして、様々なレベル(同僚、研修施設、全国組織)からサポート体制があってこそのチーフレジデントの活躍でしょう。 米国APDIMは全国的なチーフレジデント支援の学会 米国では15ヶ月サイクルと言われるように、任期の始まる数ヶ月前から新しく着任するチーフレジデントは研修プログラム長と共に改善プロジェクトを検討し、新年度が始まる(7月)からチーフレジデントは成長していく。  この任期前の大事な時期(4月)に全国的な総会(APDIM)が開催され、新規チーフレジデントを対象に前年度のチーフレジデントが様々なワークショップを企画して提供している。基調講演ではリーダーシップや必須の教育ツールなどの話を提供する。次回は2020年4月19日-22日フィラデルフィア開催なので、興味があればぜひ参加していただきたいと思います。 他にもチーフレジデントに対して提供される教科書もありますし、老年医学系の教育研究を支援するCRITという取り組みもあります。 大学プログラムに所属のチーフレジデントには、年間を通じてファカルティデベロップメントと呼ばれるワークショップや医学教育フェローシップなども用意されている。 日本でもチーフを支える組織を創る! 近年では日本の研修施設から参加しているチーフレジデント達もいる(飯塚病院からの参加報告は別記事を参照)。日本でもこのようなチーフレジデントを支援するシステムを構築できないか? 過去にAPDIMに参加したことのあるメンバーと実際に米国でのチーフレジデントを経験したものを中心に企画されたのが我々JACRAという組織です。共通の思いとして、全国の研修医の教育と労働環境をより良いものにするための若きリーダーのネットワーキングと支援を充実させたいというものがあります。コアメンバーを中心に、なんどもウェブ会議を繰り返し、日々のネットワーキングとブレインストーミングのコミュニケーションはSlackというビジネスアプリやフェイスブックグループページを活用しました。 亀田総合病院、聖路加国際病院、水戸協同病院などのメンバーからはハワイ大学までチーフレジデント研修に来て、米国のレジデンシープログラム運営におけるチーフレジデントの役割を学んだり、リーダーシップやマネージメントスキルを学習する機会がありました。(後日報告予定) 国内初のチーフレジデントミーティング! 初の大規模な企画として、2019年2月に東京で国内初のチーフレジデントミーティングを実行し、そこでは通年性プロジェクトの企画と立ち上げを目的としました。本会議をきっかけに、広報と情報共有のためにウェブサイトとブログ<www.jacra-med.org> も立ち上がりました。各方面から注目を受け、講演依頼や執筆依頼も受けるようになりました。(開催報告記事【Antaa】【週刊医学界新聞】を参照) 今後の展望 施設の規模により独立したチーフレジデントという役職は置いていないところもありますが、今後は各施設のコアリーダーとして成長したい若手教育者を全国で繋いで支援していきたいと思います。チーフレジデント制度は日本ではまだ未発達のファカルティデベロップメントの新しい形になるでしょう!

2019年2月基調講演「チーフレジデント宣言」のpart2「チーフレジデントの潜在能力」を徹底解説!

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前回はJACRAチーフミーティングでの基調講演「チーフレジデント宣言」のPart1を解説し、医療現場を取り巻く環境変化を挙げ、卒後医学教育に迫られている変化を強調し、それを実行できる研修施設のキープレイヤーとしてのチーフレジデントの存在を提案しました。 Part2では「チーフレジデントの潜在能力」と題し、米国チーフレジデント制度などの先行例から研修施設でチーフレジデントがどのように力を発揮できるのかを紹介しています。詳細は近日発刊予定の雑誌「総合診療」10月号に掲載予定です。 チーフレジデントって何?! チーフの定義 チーフの米国統計 ACGMEについて 米国内科プログラム長会議(APDIM)定義”チーフレジデントとは「管理、教育、メンターシップとカウンセリングの業務を実施している卒業、もしくは卒業見込みのレジデント」であり、米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)でも正式な役職  2009年Singhらの報告では、全米では毎年990名のチーフレジデントが選出されており、396もの内科プログラムを支えている。  84%は規定の3年間の内科レジデンシーを修了してから、1年間残って教育専属スタッフとして勤務。  外部からチーフレジデントを採用するプログラムもある。  チーフレジデントの役割って? L 主に研修プログラム長の右腕として研修プログラムの運営をする。  チーフレジデント自身も1年間の任期の間に若手教育者リーダーとして学び、成長する機会となる。 マネージメント カウンセリング 折衝係(コンフリクトマネージメント) ロールモデリング などが含まれ、実際にそういう立場として実践してフィードバックをもらう中で自身のスタイルを確立していくことになる。 筆者の所属していたハワイ大学内科プログラムでのチーフレジデント業務を例に「チーフレジデントの多能性」を紹介したいと思います。  1)チーフレジデントはマネージャーである 研修施設を維持していくには、米国ではACGMEやその下部組織であるCLERなどの外部監査をクリアしなければなりません。そこで、チーフレジデントが日々の現場監督として、 新入職オリエンテーション、 毎回のローテーション交代時のオリエンテーション、 業務マニュアル作成、 教育カンファレンスの企画運営、 研修医のスケジュール管理、労働時間監視 病欠時などの対応、 予算の管理、 日々のトラブルシューティング、 研修医代表として施設認定更新時の対応、 勧誘 などの役割を果たします。 その際に参考となるリソースとして、以下を利用しました。 Core Entrustable Professional Activities for Entering Residency (CEPAER) :AAMCが発行。カルテの書き方、申し送りの仕方、コンサルテーションの仕方、医療文献の調べ方などのワークショップを企画する際の到達目標が書かれている。 RIME model (reporter-interpreter-manager-educator):毎月のローテーション開始初日にチーフレジデントがオリエンテーションを提供し、そこで業務連絡及びカリキュラムの確認をします。学年ごとの目指すべき姿を端的に示すモデルとして有用。 開始時に到達目標や評価項目の再確認をすることで、教育目的の業務であることを意識してもらうようにします。 IPASS :申し送りを標準化するツール。新年度開始時には朝と夕の申し送り時にチーフが立ち会い、申し送りの質を評価。 Clinical Learning Environment Review (CLER)、CLERのガイドライン:ACGMEの下部組織。研修医の労働環境、医療の質改善活動への参加、患者安全への意識を確認するような特別な監査の指針。 Jeopardy system:急な欠員時に呼び出される順番が決まった研修医のリストを予め決めておいて、そこからチーフレジデントが連絡して呼び出します。 Best Practice for…

2019年2月基調講演「チーフレジデント宣言」のpart1を解説!

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2019年2月のキックオフミーティングで冒頭に発表された「チーフレジデント宣言」と題する野木真将氏による基調講演の内容を3回(Part1-3)に分けて紹介したいと思います。 Part1の全体テーマは、「日本の卒後医学教育を取り巻く環境変化」  教えないといけないことが増えている環境変化に対応するには、従来の方法(医学知識の伝達を中心とする卒前教育を終えて、いきなり業務プロセスに慣れて労働力として高く期待される卒後教育)だけではなく、よくデザインされた新しいカリキュラムと、それを現場に落とし込むときに研修医の声を代表する人材を意思決定のテーブルに就かせる必要があるのではないでしょうか? 基調講演は、上のスライドのような質問提起から始まりました。会場の参加者は「いいえ」と首を横に振ったり、首をかしげたりしていましたが、ここでいう「21世紀のニーズ」とはどういうことでしょうか? 例えば「敗血症」という状態に対する対応として、抗生剤普及前の1920年代まではどのように治療していましたか? 答えは「瀉血(しゃけつ)」でした。それが今の研修医はどうでしょう?初期大量補液、抗生剤、画像での熱源検索、気管内挿管からの人工呼吸管理、中心静脈カテーテル挿入からの昇圧剤投与、なんなら血液透析まで指示する必要も出てきます。さらに今では早期離床からのせん妄予防、抗生剤の適正使用までの、「医療の質管理」までついてきます。全然違いますよね?   感染症領域の一部だけを見ても、研修医のトレーニング方法も100年前と一緒ではダメだということです。   教育とは、「今」だけではなくて、学習者が10年後、20年後に必要となるスキルや知識を習得して実践してもらうことでもあります。では10年後、20年後の日本の医療はどのようになっているでしょうか? 日本の医療の未来予想図とは? 2025年にはSilver Tsunamiと呼ばれる現象、つまり国民の4人に1人が後期高齢者という時代に突入します。外来、病棟、ICUなどが高齢者で溢れるわけです。もうすでにその兆候が見られますよね?  将来を見越して、医学部や卒後研修で老年医学を教えていますか? せん妄、認知症、高齢者うつ、転倒、不眠、便秘、ポリファーマシー、終末期医療、緩和ケアなどは「どこが専門?家庭医?内科医?」と言っている場合ではなく、全ての医療従事者が知っておくべき分野と言えます。 同じく2025年には世界保健機構(WHO)が糖尿病と診断される人が12人に1人と予想しています。<Diabetes Care 1998 Sep; 21(9): 1414-1431> こんなに血糖測定装置やインスリン製剤が発達しているのにも関わらず、なぜ患者は減らないのでしょう?これから生活が変化する発展途上国の外食産業や車社会による運動不足という要素もありますが、他にも医療従事者、特に医師が患者の行動変容を促すような診療や説明をしていないからかもしれません。  研修内容にMotivational interviewingとか、多職種チームによる患者指導と外来フォローを盛り込んでいますか?ワークショップなどで練習させていますか? さらに先の2035年を目標として厚生労働省が保健医療のあるべき姿を発表しています。その基盤として、イノベーション環境、次世代型の保健医療人材を含んでいます。 2019年春に医学部に入学した医学生たちが卒業して専攻医研修まで修了するのが2030年になる計算ですので、そう遠い未来ではありません。今の医学部カリキュラムに「次世代」の要素はどれほどあるでしょうか?その指導医となるのは今の研修医たちです。 多職種連携、Transition of care, 患者安全、医療の質改善、High Value careなどを今の研修医たちは学んでいますか? 一般市民にとっては「次世代」というとテクノロジー面が真っ先に浮かぶかもしれませんが、すでにテクノロジーは生まれており、技術が成熟してから後付けで法的整備や教育内容を検討していては国際競争についていけないかもしれません。 ビッグデータを利用した臨床研究の手法、Internet of things (IoT)の医療機器への応用、Personal Health Record (PHR)を利用した病診連携、インターネット5G時代による遠隔医療の可能性、そして人工知能(Artificial intelligence: AI)時代における迅速診断やテーラーメード医療などを研修医に教えてますか? 15年先だけを考えても、こんなにも医学教育に関わる環境変化が予想されます。口で言うのは容易いのですが、実際に「医学教育システムの進化を現場で誰が調整していくのか?」。1つ言えるのは、会議室で院長、部長、教授たちが一方的に考えて決められるものではないと言うことです。 今の研修医たちはただでさえ臨床暴露が少ない医学部生時代を取り返すために必死に卒後研修を乗り越えようとしているからです。現場をよく知る人物で、研修医の声を抽出して代表できる人材を教育システムの意思決定の場に参加させる必要があると思います。それよりも喫緊の課題として、「誰が現場で指導するの?」と言う疑問に対する答えもまだ無いように感じます。 国境を越えて移動する医師と日本の医学部の課題  検討課題は何も日本国内だけではありません。ECFMGの報告によると、昔に比べて海外の医学部数が増加しているようです。特にインドがすごい速度で増えているそうです。米国でも欧州でも国境を越えて医師はどんどんと移動(physician migration)しています。米国では国内の高まる需要を満たすために、海外医学部卒の優秀な医師を受け入れてきたましたが、最近では海外の医学部の「教育の質のバラつき」を懸念し始めました。 2014年にはECFMGが、「2023年からは世界医学教育連盟(WFME)の認定を受けていない医学部卒業生には米国医師免許を認可しない」と発表しました。さぁここからが大変です。日本国内でWFMEの認定を受けている医学部がこの発表時点でゼロ(!)だったからです。 日本人医師が海外の医師免許を取得する数は限られていますが、国際標準の認定を受けていないという現状は危機感を生み、WFMEが直接監査に入るのではなく、JACMEという国内の第三者機構を立てての代理監査の段階に入りました。 数ある課題の中から代表的なものとして、「医学生の臨床参加型実習」が注目されました。規定の週数が足りないのは大学内の調整で可能だとしても、臨床参加させてくれる研修病院の確保はどうするのでしょうか? ただでさえ忙しい研修現場に臨床実習の医学生が参加してきたときに、誰が指導するのでしょうか? プログラム責任者養成講習会だけでは、十分な数の良質な指導医は確保できないかもしれません。 指導医が足りない場合には、医学生との距離が近い研修医に指導を負担してもらう必要もあるでしょう。研修医に臨床医学教育のスキルを教えていますか?アウトカムを設定して、直接観察による公正な成績評価をする習慣がついてますか? チーフレジデントの期間は、卒後医学教育を実施運営する側の立場から概観して実践する、という貴重な機会になります。研修プログラム長の右腕として、ベッドサイド教育、カンファレンス教育などの「対個人レベル」での医学教育から、レジデント全体に対する「対集団レベル」での医学教育まで様々に活躍する場面が想定されます。 これに、全国の仲間とのネットワークやサポート体制が加わればいいと思いませんか? Part 2では、「チーフレジデントの潜在能力」と題して、米国でのチーフレジデント制度を参考にチーフレジデントの役割の具体例を解説したいと思います。

全国のチーフをつなぐ次世代コミュニケーションツール Slackの使用感!

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2019年2月のチーフレジデントミーティングの企画もそうですが、広くできたネットワークを活かして通年性のプロジェクトを進めていくのもJACRAの支援事業の1つです。 全国多施設に広がる同志をつなぐのに最適なコミュニケーションツールはないか?と検討していたところ、すでに飯塚病院、橋本市民病院、水戸協同病院などで導入されていた「Slack」というアプリケーションが候補となりました。 従来のGoogle DriveやDropboxといったファイル共有サービスは使用したことがあったのですが、こちらのSlackはファイル共有のみならず、多数の交錯する会話や案件を整理して進めていくのに最適だということに気づきました。 具体的には#チャンネルという機能で異なるトピックを立てて、そこに関連するメンバーを誘って会話のスレッドを進めていくことができます。このように「全体に伝達したいこと」と「限定されたメンバーで進めたい会話」が並列でトピックごとに整理されている感じは今までのGoogle platformやEメールを使った連絡手段にはできないな、と思いました。タスク管理アプリの「Trello」に似ている感じです。メッセージ通知はパソコンやスマートフォンなど複数のプラットフォームで送受信できるため、まるで同じ建物内の別部署で働いているような感覚に陥ります。これはすごい! 全国のチーフたちも最初は使い慣れたLINEグループやFacebook messengerグループなどで会話していた場面もありましたが、今ではメンバー約70名が自由度高く使用してプロジェクトの相談や、普段のチーフレジデント業務での相談事にも使っています。 同じSlack内にいるメンバー同士はどのような組み合わせでも個人的にメッセージを送ることができますし、共有したファイルは異なるチャンネルにシェアするのも手軽にできます。 例えば、JACRAのSlackでは以下のようなチャンネルで連絡を取り合っています。 自己紹介用のチャンネル 各プロジェクト班のチャンネル ウェブサイトへの意見交換チャンネル 勉強会カレンダー用のチャンネル スライドや文献共有用のチャンネル 広報部門のチャンネル オススメ書籍用のチャンネル 業務連絡用のチャンネル 気軽に相談!カウンセリング、マネージメント、教育業務用のチャンネル 運営執行部のチャンネル 前回の投稿のウェブ会議ツールである「ZOOM」もそうですが、こうして良質なサービスを有効利用していくことで地理的な制約を越えて建設的に活動できることは大きな感動でした。 JACRAはこれからもメンバーを広く募っています! 前回のミーティングに来ていただいたオブザーバーの指導医たちも参加していますので、こちらのJACRA Slackに参加して全国の若手リーダーたちと交流をしたい方は管理人までご連絡ください! https://www.youtube.com/watch?v=9RJZMSsH7-g%20 What is Slack? (2min36sec)

医学界新聞寄稿:日本版チーフレジデントミーティング始まる!

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小杉代表が2019年2月に東京で開催された第一回チーフレジデントミーティングin Japan開催までのプロセスと当日の様子を最新号の医学界新聞(医学書院)で報告してくれました! ”翌年度にチーフレジデントに就任する予定の各施設の代表者を集め,チーフレジデントを経験した先輩医師から自身の経験や情報を得ることで、施設の垣根を越えたチーフレジデントの屋根瓦方式を作ることができると、本会の開催を通じ実感した。この取り組みは、日本の卒後教育に必ずや良い影響を与えられるだろう。” ”現時点では「研修医の生の声を集めて世に出す」組織は存在していない。 研修をより良いものにするには,教育を受ける当事者である研修医の意見は欠かせない。JACRA はチーフレジデントという各研修組織の代表者が集まる機会を作 り、研修医の生の声も集めて世に出すことで、日本の卒後研修の手助けができる組織へと進化させたい。来年度以降もチーフレジデントミーティング in Japan は継続して開催する予定である。”  と最後は閉めくくっている。

Web会議にZoomって便利なの?

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JACRAの活動の柱の一つに、全国の多施設チーフレジデントの連携があります。 2月のミーティングを企画する際にはコア施設のメンバーと会議でディスカッションを重ねる必要があり、その際に役に立ったツールが二つありました。それは”Zoom”と”Slack”です。 Zoomってなに? Zoomはスカイプやグーグルハングアウトのようなウェブでのビデオチャットサービスですが、とにかく「安定感がある」と「多人数に強い」という特徴が気に入り、JACRAではよく使用されます。管理人は「画面共有機能」も気に入っており、Google Docでの議事録や資料を供覧しながら会議を進めるのが効率的だと感じています。不参加であった人のために録画も簡単にできます。 ↓ ある日のWeb会議終了後のスナップショット。 ↓ 初めてZoomを使う人向けの解説動画 無料版でいいの? 無料版だと40分ごとに会議を終了して、別リンクで再度Web会議に参加する必要があるのですが、意外とその方がメリハリよく会議を進めることができるような気がします。   次回はもう一つのツール、Slackについての使用感を報告したいと思います!