前回(part2)ではチーフレジデントの潜在能力についてまとめましたが、これらすべてを一人のチーフレジデントで成し遂げているわけではありません。

歴代のチーフから引き継がれてきたプロジェクトもあれば、相方のチーフレジデントと分担してすることもあります。

そして、様々なレベル(同僚、研修施設、全国組織)からサポート体制があってこそのチーフレジデントの活躍でしょう。

米国APDIMは全国的なチーフレジデント支援の学会

米国では15ヶ月サイクルと言われるように、任期の始まる数ヶ月前から新しく着任するチーフレジデントは研修プログラム長と共に改善プロジェクトを検討し、新年度が始まる(7月)からチーフレジデントは成長していく。
 

 この任期前の大事な時期(4月)に全国的な総会(APDIM)が開催され、新規チーフレジデントを対象に前年度のチーフレジデントが様々なワークショップを企画して提供している。基調講演ではリーダーシップや必須の教育ツールなどの話を提供する。次回は2020年4月19日-22日フィラデルフィア開催なので、興味があればぜひ参加していただきたいと思います。

 他にもチーフレジデントに対して提供される教科書もありますし、老年医学系の教育研究を支援するCRITという取り組みもあります。
 大学プログラムに所属のチーフレジデントには、年間を通じてファカルティデベロップメントと呼ばれるワークショップや医学教育フェローシップなども用意されている。

日本でもチーフを支える組織を創る!

 近年では日本の研修施設から参加しているチーフレジデント達もいる(飯塚病院からの参加報告は別記事を参照)。日本でもこのようなチーフレジデントを支援するシステムを構築できないか?

 過去にAPDIMに参加したことのあるメンバーと実際に米国でのチーフレジデントを経験したものを中心に企画されたのが我々JACRAという組織です。共通の思いとして、全国の研修医の教育と労働環境をより良いものにするための若きリーダーのネットワーキングと支援を充実させたいというものがあります。コアメンバーを中心に、なんどもウェブ会議を繰り返し、日々のネットワーキングとブレインストーミングのコミュニケーションはSlackというビジネスアプリやフェイスブックグループページを活用しました。
 
 亀田総合病院、聖路加国際病院、水戸協同病院などのメンバーからはハワイ大学までチーフレジデント研修に来て、米国のレジデンシープログラム運営におけるチーフレジデントの役割を学んだり、リーダーシップやマネージメントスキルを学習する機会がありました。(後日報告予定)

国内初のチーフレジデントミーティング!

初の大規模な企画として、20192月に東京で国内初のチーフレジデントミーティングを実行し、そこでは通年性プロジェクトの企画と立ち上げを目的としました。本会議をきっかけに、広報と情報共有のためにウェブサイトとブログ<www.jacra-med.org> も立ち上がりました。各方面から注目を受け、講演依頼や執筆依頼も受けるようになりました。(開催報告記事【Antaa】週刊医学界新聞】を参照)

今後の展望

 施設の規模により独立したチーフレジデントという役職は置いていないところもありますが、今後は各施設のコアリーダーとして成長したい若手教育者を全国で繋いで支援していきたいと思います。チーフレジデント制度は日本ではまだ未発達のファカルティデベロップメントの新しい形になるでしょう!